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新型コロナウイルスについて学習、その4、ウイルス複製 [コロナウイルス]

昨日はウイルスが細胞に侵入しRNAを放出する所まで書きました。今日はその続きです。

4. ウイルスによる細胞のハイジャック
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The infected cell reads the RNA and begins making proteins that will keep the immune system at bay and help assemble new copies of the virus.

(感染を許した細胞はRNAを読み取る。その結果、免疫系を寄せ付けずにウイルスの新しいコピーを組み立てるのに役立つタンパク質の作成を開始する。)

Antibiotics kill bacteria and do not work against viruses. But researchers are testing antiviral drugs that might disrupt viral proteins and stop the infection.

(抗生物質は細菌を殺すものの、ウイルスには効かない。しかし研究者たちはウイルスタンパク質を破壊して感染を止める可能性のある抗ウイルス薬をテストしている。)

何日か前にレムデシビルについて考察しましたが、その薬はRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤でした。感染そのものを止める抗ウイルス薬があるのなら、ウイルスの増殖を防ごうとするとレムデシビルと仕組みが違うのかな、と想像します。調べてみないとわかりませんが、ただの言葉の綾かも知れません。

レムデシビルで少し書きましたが、ウイルスRNAはRNA依存性RNAポリマラーゼ(RNA-dependent RNA polymerase)という酵素により、そのRNAの塩基配列を読み取ることで補完的なRNAを複製・合成します。通常RdRpと省略して書くようです。人間の身体にある正常細胞はDNAにより遺伝子情報が保存されるので(私の理解では)DNA依存性RNAポリマラーゼによって遺伝子情報を複製・合成し、RdRpは必要ないのでそれを発現する遺伝子はもっていないはずです。従ってウイルス自身がこの遺伝子情報を持ち、正常細胞をハイジャック後自分で発現させ、それを使ってRNAの複製を試みていると想像しました。

5.ウイルスのたんぱく質を合成、組み立て

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As the infection progresses, the machinery of the cell begins to churn out new spikes and other proteins that will form more copies of the coronavirus.

(感染が進むにつれて、正常細胞の機構が新しいスパイクや他のたんぱく質を作り出し始め、コロナウイルスのコピーをさらに形成する。)

ウイルスRNAは新しいウイルスを構成するたんぱく質も合成します。スパイクたんぱく質、エンベロープ、膜は一通り翻訳された後、上の図でいう迷路のような所(小胞体, ER)に輸送されます。ここではさらに正しい立体の構造(構造が異常なたんぱく質は構成されるアミノ酸は同じでも正しく機能しません)を形成することになります。

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New copies of the virus are assembled and carried to the outer edges of the cell.

(ウイルスの新しいコピーが組み立てられ、細胞の外縁に運ばれる。)

正しい構造を持ったタンパク質は分泌経路に沿って小胞体からゴルジ体に移動します。ここでは細胞外に分泌されるために必要な化学的な飾りつけが行われ、振り分けが行われます。私の短絡的な理解では、宅配便の配収所で依頼された荷物(ウイルス)にタグをつけ(化学的修飾)、宅配先のセンターに振り分ける、といったイメージです。言うまでもなく、これは正常細胞の正常な機能の一部を利用して行われていると考えています。

6. 感染の拡大

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Each infected cell can release millions of copies of the virus before the cell finally breaks down and dies. The viruses may infect nearby cells, or end up in droplets that escape the lungs.

(感染した各細胞は最終的に細胞が故障して死ぬ前に、何百万ものウイルスのコピーを放出する可能性がある。ウイルスは近くの細胞に感染するか、肺から脱出する水滴になってしまうかも知れない。)

ゴルジ体から分泌されたウイルスは小胞に乗って細胞膜に輸送され、今度はエキソサイトーシスにより細胞外に放出されるとのことです。

MERSの電子顕微鏡による画像ですが、ウイルス(黄色)が分泌されるイメージがわくかと思います。BBCの記事より。

Mers: The new coronavirus explained

virus5.jpg

これでざっくりとながら、新型コロナウイルスの感染、複製、分泌経路がなんとなく掴めたかな、と思います。現実に直面しているウイルス理解の助けになれば幸いです。次回があるかどうかは、まだ決めかねています。

参考文献(どちらも無料で閲覧出来ます)
Coronaviruses: An Overview of Their Replication and Pathogenesis
COVID-19 infection: Origin, transmission, and characteristics of human coronaviruses
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